
職種別リスキリング事例と未来予測:AI時代を生き抜くためのスキルとは
最終更新日:2025/03/29
まずはじめにここまでのおさらいをしたいと思います。
初回の第1部では、「リスキリングとは?その重要性と習得すべきスキルを徹底解説」ということで、「リスキリングって何?」という基本的から、なぜ必要とされているか、について解説しました。
また、前回の第2部では、「企業と個人のためのリスキリング戦略:DX時代のキャリア形成と効果的な進め方」ということで、企業が人材戦略としてどのようにリスキリングを活用しているか、そしてDX時代に個人がどのようにキャリアを築くべきかを具体的に解説しました。
いよいよ最終回となる、今回の第3部では、実際の職業ごとにどんなスキルが求められているのか、どのようにリスキリングが進められているのかをリアルな視点で掘り下げます。
さらに、AIの進化や国の支援制度など、社会全体の変化を踏まえながら、今後リスキリングがどう発展し、私たちはどんな準備をすべきかについても、未来予測を交えてお届けします。
「自分の職種ではどう活かせる?」「これから何を学ぶべき?」という実務的なヒントが詰まった内容です。
リスキリングについては、第1章から第9章までの3部構成でご用意しています。
今回は第7章から最後の第9章までの第3部となりますので、よろしくお願いします。
【目次】
・リスキリングのメリットその1
・リスキリングのメリットその2
・リスキリングのメリットその3
・リスキリングのデメリットその1
・リスキリングのデメリットその2
・リスキリングのデメリットその3
・ITエンジニアの場合
・マーケティング担当者の場合
・製造業の現場スタッフの場合
・事務職・バックオフィススタッフの場合
・AIと自動化による仕事の再定義
・国家レベルでのリスキリング支援の強化
・ライフシフト社会での第二・第三のキャリアの必要性
・グローバル基準でのスキル評価への移行
・「リスキリングは、変化を味方にする生涯戦略」

【第7章】リスキリングのメリットとデメリット
結論として、リスキリングは多くの恩恵をもたらしますが、続ける覚悟が求められます。
リスキリングには非常に多くのメリットがありますが、決して楽な道ではありません。
自分の時間やエネルギーを投資するからこそ、その対価として大きな成果が得られるという側面があります。
ここでは、リスキリングの代表的なメリットとデメリットを紹介します。
はじめに、リスキリングのメリットから紹介します。
・リスキリングのメリットその1
「キャリアの選択肢が広がる」
新たなスキルを習得することで、社内異動、転職、副業、起業など、さまざまなキャリアパスが見えてきます。
「今の仕事しかできない自分」から脱却できるのは、人生において非常に大きなアドバンテージです。
・リスキリングのメリットその2
「市場価値が高まり、年収アップにもつながる」
リスキリングにより成長産業で通用するスキルを得ることで、転職市場でも有利に働きます。
「時代に求められる人材」であることは、給与や待遇にも反映されやすい傾向があります。
・リスキリングのメリットその3
「自信や自己肯定感が高まる」
「学び続けている」「成長している」という実感は、働くうえでのモチベーションやメンタル面にも好影響を与えます。
リスキリングは単なるスキル取得ではなく、自分を信じられる力を育てる行為とも言えるでしょう。
次にリスキリングのデメリットを紹介します。
・リスキリングのデメリットその1
「時間と労力の負担】
仕事や家庭との両立の中で、新しいことを学ぶ時間を確保するのは簡単ではありません。
特に独学の場合、学習の方向性や進捗管理に苦労する人が多いです。
・リスキリングのデメリットその2
「途中で挫折しやすい」
リスキリングは、スポーツで例えるとマラソンであると考えています。
短期集中で成果が出るわけではないため、途中でモチベーションを失ってしまうリスクもあります。
仲間やメンターの存在が大きな支えになるケースも多いです。
・リスキリングのデメリットその3
「コストがかかる場合もある」
リスキリングを実践するうえで活用するスクールや専門講座、資格取得には費用がかかるケースもあります。
ただし最近では、無料のオンライン学習プラットフォームや、自治体・企業による支援制度も増えており、工夫次第でコストを抑えることも可能です。
リスキリングには、確かに大変さもありますが、それ以上に未来を自分の手で切り開けるチャンスを与えてくれます。
少しの覚悟と継続力があれば、誰でも新しいステージへと踏み出せるのです。

【第8章】職業別のリスキリング事例
結論からいうと、職種ごとに求められるスキルは異なるが、共通して必要なのは、学び続ける姿勢です。
リスキリングと一口に言っても、どのスキルを学ぶべきかは業種や職種によって大きく異なります。
この章では、代表的な職業ごとに「今、どんなリスキリングが求められているか」を紹介します。
・ITエンジニアの場合
ITエンジニアといえば技術者の代表格ですが、技術の進化スピードが早いため、常にリスキリングが求められる職種でもあり、クラウドやAI、DevOpsの強化などが求められています。
注目のスキル領域としては、AWS、GCPなどのクラウドに関することや、機械学習・AIモデル開発、DevOps、Docker、Kubernetesなどを活用したインフラ自動化などがあげられます。
これまで、オンプレミス中心だったインフラエンジニアが、AWSの認定資格を取得してクラウドエンジニアへ転身することで、在宅勤務にも対応しやすくなり、年収やワークライフバランスの向上を図ることができます。
・マーケティング担当者の場合
「感覚」から「分析」に変わったのが現代のマーケティングです。数字を読め、データ分析やデジタル戦略を企画できるマーケターが求められています。
注目のスキル領域としては、Google Analyticsなどを活用したデジタルマーケティングツールの活用スキルやマーケティングオートメーションの活用、SNSなどを活用した広告運用があげられます。
従来の紙広告担当だった人が、Google広告とSNSマーケの運用スキルを習得し、デジタル部門に異動することで、新規リード獲得数が大幅に増加させるなどを期待することができます。
・製造業の現場スタッフの場合
製造業ではデジタルトランスフォーメーションが急速に進み、IoTを活用した工場のスマート化、いわゆるデータを活用する力が求められています。
注目のスキル領域としては、センサーデータの収集・分析に関するスキルや、生産管理システムに関する知識やノウハウ、業務効率化のための簡易プログラミングスキルなどがあげられます。
これまで工場のライン作業のみを担当していたスタッフが、現場データのBIツールで可視化するスキルを習得することで、企画部門へ職種転換することで、業務改善提案など主導するなどの期待ができます。
・事務職・バックオフィススタッフの場合
定型業務はもはや、AIやRPAに代替される時代になってきています。
人にしかできない価値ある仕事へシフトすることが重要です。
注目のスキル領域としては、業務自動化を行うためのRPAツールの活用スキルや、ITツール活用するためのITリテラシーの向上、Excel関数やマクロといった業務改善提案力などがあげられます。
営業事務の方がRPAツールを独学で習得することで、月100時間分の業務を自動化し、チーム全体の働き方改革に貢献するなどの期待ができます。
リスキリングは、どの職業にも、自分なりのかたちがあります。
そして、どの職業にも共通して必要なのは、変化に適応するために学び続ける姿勢です。
自分の業務や将来像に合ったスキルを見極め、地道に積み上げることが、結果的に自分の武器になります。

【第9章】現在の社会情勢を考慮した今後の予想
結論として、リスキリングは、個人と社会の両面で、今後ますます不可欠な存在になるでしょう。
コロナ禍、AIの進化、少子高齢化、グローバル競争。
こうした社会変化の中で、私たちの働き方・学び方は大きく変わりつつあります。
その流れの中で、リスキリングは一時的な流行ではなく、今後も長期的に必要とされる社会インフラになっていくと考えられます。
・AIと自動化による仕事の再定義
ChatGPTをはじめとする生成AIの進化により、ホワイトカラー職の中にも大きな影響が出始めています。
単純な事務作業や情報整理、文章作成、プレゼン資料の下書きといった作業は、AIが短時間で代替可能になってきました。
つまり今後は、AIができない仕事、いわゆる創造力・判断力・対人スキルを中心に、人間が担うべき仕事の再定義が必要となります。
こうした動きに対応するためにも、個人が新たなスキルを学び続けることが重要です。
・国家レベルでのリスキリング支援の強化
日本政府も2020年代から、リスキリング支援を本格的に打ち出しています。
例として、リスキリング補助金・助成制度の拡充や、雇用保険を活用した教育給付金の対象拡大、大学・専門学校との連携による社会人向けプログラムの整備などの施策を打ち出しています。
今後は、企業や個人だけでなく、国全体で学び直す社会をつくる動きが加速する見込みです。
・ライフシフト社会での第二・第三のキャリアの必要性
人生100年時代、ひとつの会社・職種だけで人生を終えるのは難しい時代です。
60代、70代でも働き続ける選択肢が現実味を帯びてきた中で、年齢を重ねても、新しいことを学び、働き続けられる社会が求められています。
そのため、中高年層向けのリスキリングプログラムや、再挑戦を応援する制度の整備も今後さらに拡充されていくでしょう。
・グローバル基準でのスキル評価への移行
世界的には、職歴よりもスキルを重視するスキルベース雇用の流れが進んでいます。
日本でも徐々に、デジタルバッジやeポートフォリオなどのスキル可視化ツールの活用が広がりつつあり、これに伴って履歴書よりも、何ができるかが重視される時代になる可能性があります。
これからの時代、リスキリングは、自分のためだけでなく、社会のためにも必要不可欠な取り組みになります。
社会全体で学び直しが当たり前という文化が広がることで、日本全体の生産性や創造性も高まっていくでしょう。

まとめ
「リスキリングは、変化を味方にする生涯戦略」
職種ごとに必要なスキルは異なるが、学びの姿勢は共通で、AIや自動化により、人にしかできない仕事への移行が進みます。
国や企業も支援体制を整えつつあり、学び直しが当たり前の社会になり、リスキリングは、働く人一人ひとりがキャリアの主人公になるための鍵となります。
リスキリングは一時的な流行ではなく、人生100年時代を生き抜くための長期的な武器です。
そしてそのスタートは、どんな小さな学びでも構いません。自分の未来に責任を持ち、自らの手でキャリアを描く第一歩を、今この瞬間から踏み出しましょう。