企業と個人のためのリスキリング戦略:DX時代のキャリア形成と効果的な進め方

企業と個人のためのリスキリング戦略:DX時代のキャリア形成と効果的な進め方

最終更新日:2025/03/29


前回は、「リスキリングとは?その重要性と習得すべきスキルを徹底解説」という内容で、リスキリングの定義や必要性、学ぶべきスキルの全体像について整理しました。


今回は、企業が人材戦略としてどのようにリスキリングを活用しているか、そしてDX時代に個人がどのようにキャリアを築くべきかを具体的に解説します。

さらに、リスキリングを成功に導く、学び方の工夫にも踏み込みます。


「学びたいけど、どう始めればいい?」「会社で制度化するには?」

そんな疑問を抱える方にとって、次のステップへのヒントが詰まった内容です。


なお、今回は全9章のうちの第4章から第6章までの第2部となりますのでよろしくお願いします。


【第4章】企業の人材戦略としてのリスキリング

【第4章】企業の人材戦略としてのリスキリング


結論からいうと、リスキリングは人材不足と競争力強化を同時に解決する最重要戦略です。


少子高齢化、人手不足、グローバル競争。


中小企業から大手企業まで、人が足りないという課題はすでに深刻です。

そんな中で注目されているのが、今いる人材のスキルを進化させて、新たな戦力へ変えるという考え方です。

これがまさにリスキリングの本質であり、企業にとっては、攻めと守りを両立させる戦略となっています。



・なぜ企業はリスキリングを急ぐのか?


従来のように、足りないスキルは新しい人を採用すればいいという考え方は、もはや通用しなくなりつつあります。


理由は主に3つです。


採用競争が激化し、IT人材は特に獲得競争が激しく、中小企業では採用が難しくなってきている。

教育コストの効率化が求められており、その場合、既存社員の育成の方が早く、企業文化にも適合しやすい。

社会構造や経済市況の変化への即応性を高めるため、組織内で柔軟に人を動かさないといけないケースがでてきている。


リスキリングをうまく活用できれば、これらの理由に柔軟に対応することができ、社員を辞めさせずに、組織を変えることが可能になります。



・リスキリングの導入で得られる企業のメリット


企業がリスキリングを導入することで、次のようなメリットを得ることができます。


新規事業や部署間移動に対応できる人材を増加させることができ、組織の柔軟性強化に繋がる。

社員自身が成長している実感を得ることができ、社員のモチベーションに直結、いわゆるエンゲージメント向上に繋がる。

スキルを評価される環境を形成でき、社員の定着率を高め、結果として離職率の低下に繋げることができる。

即戦力人材を外部から雇う必要がなくなり、採用コストの削減に繋げることができる。


これらのメリットのほかにも、スキルの見える化を通じて、社内の人材配置の最適化や人事評価の精度向上にも繋げることができます。



・実践する企業が増えている


最近では、国内の企業でリスキリングの取り組みが進んでおり、大手企業では、IT未経験社員向けのプログラミング研修を導入やリスキリングポイント制を導入し、自主学習を促進している例があります。

また、中小企業では人材開発に関する補助金や助成金などを活用し、社内でのIT教育制度を整備しています。


中小企業でも、外部研修やオンライン学習サービスを活用しながら「まずは少人数で試す」というアプローチが主流になりつつあります。


リスキリングは、人材が足りないという課題を、今いる人を育てるという前向きな戦略に転換する手段です。


これからの企業経営においては、採用よりも育成が競争力の源泉になります。


その視点こそが、リスキリングを導入する企業にとっての最大のメリットなのです。


【第5章】DX時代における個人のキャリア形成

【第5章】DX時代における個人のキャリア形成


結論からいうと、変化の激しい時代には、自分のキャリアは自分でデザインするという姿勢が必要不可欠です。


デジタル・トランスフォーメーションの進展により、産業構造も働き方も大きく変わりました。

そんな中で、会社や社会にキャリアを委ねるのではなく、自分自身が学び、選び、動くことが、これまで以上に求められています。


リスキリングは、まさに主体的キャリア形成を後押しする武器なのです。


・安定した職業は存在しない時代に突入


かつては、資格を取れば一生安泰といった考えが通用していた時代もありましたが、今は状況が大きく異なります。

どんな業種でも、デジタル化やAIによる自動化の影響を受けています。


たとえば、会計や事務の仕事はAIによって大部分が自動化されつつあります。

医療や教育の分野ですら、リモート診療やオンライン学習の導入で変化しています。


つまり、今ある仕事が将来もあるとは限らない、それが現実です。


・キャリアの多様化と選べる自由


リスキリングを進めることで、次のようなキャリアの可能性が広がります。


本業と副業を組み合わせたパラレルキャリアへの挑戦。

業種や職種の垣根を越えた転職、再就職。

独立や起業への準備。


重要なのは、ひとつの会社・職種に縛られない働き方を選べる状態にするということで、スキルさえあれば、人生の選択肢は格段に広がります。



・リスキリングは未来に投資するという考え


今の仕事で使わないスキルを学ぶのは、一見、無駄に思えるかもしれません。

でも、リスキリングは、今の自分に必要なことではなく、これからの自分に必要なことを学ぶ行為です。


今すぐ役立たないとしても、未来のチャンスに備えることで、将来的なキャリアの安定や成長につながります。



・変化を恐れず、学ぶ習慣を身につける


リスキリングの本質は、新しいことに挑戦し続ける姿勢にあります。

知識やスキルは、学びさえすれば誰でも手に入れられる時代になっています。

大切なのは、学ぶことをやめないことです。


これまで文系だった人がITスキルを学び、未経験からエンジニアになった例も少なくありません。

年齢や経験に関係なく、学ぶ意欲さえあればチャンスは誰にでもあります。


DX時代のキャリアは、企業が与えるものではなく、自分で築くもの。リスキリングは、選べる人生を手に入れるための最強の自己投資です。


そしてそれは、特別な人だけでなく、今この記事を読んでいるあなたにも確実にできることなのです。


【第6章】効果的なリスキリングの進め方

【第6章】効果的なリスキリングの進め方


結論としては、目的を明確にし、自分に合った学び方で習慣化することが成功の鍵です。


「よし、リスキリングを始めよう!」と思い立っても、継続できずに途中で挫折する人が多いのも事実です。

リスキリングを効果的に進めるためには、戦略的に学ぶという姿勢が大切です。

ここでは、実践的なステップを4つに分けて紹介します。


・効果的にリスキリングを進めるステップその1

 「ゴールを明確にする」

まず大事なのは、なぜリスキリングしたいのかをはっきりさせることです。

目的が曖昧なままだと、モチベーションは長続きしません。


リスキリングをする目的として、

転職してデジタルマーケターになりたい。

社内で異動してDX推進部署に入りたい。

副業でWeb制作を請け負いたい。


といった目的があげられるのではないでしょうか?

さらに、「3か月でHTMLを学ぶ」「月に2冊専門書を読む」など、具体的な目標を立てることで学習の進捗も管理しやすくなります。


・効果的にリスキリングを進めるステップその2

 「スキルギャップを見える化する」

今の自分が持っているスキルと、目指す姿に必要なスキルとのギャップを把握することも重要です。

これを明確にすることで、何をどれだけ学ぶ必要があるのかが可視化されます。


おすすめの方法として、

ストレングスファインダーなどの自己診断ツールを活用する。

キャリアカウンセラーやメンターと相談する。

業界求人のスキル要件をリサーチしてリスト化する。


といった方法があります。


・効果的にリスキリングを進めるステップその3

 「自分に合った学習スタイルを選ぶ」

学びのスタイルにはいろいろあります。

自分のライフスタイルや性格に合った方法を選ぶことで、無理なく続けられます。


自分のライフスタイルや性格に合った方法として、次のようなものがあげられます。


自宅で好きな時間に学習でき、かつ、実践型が多いオンライン講座。

理論を深く学べ、通勤時間の活用にもできる書籍や参考書。

モチベーション維持しやすく、仲間もできる通学型スクール。

業務に直結し、会社から支援を受けることでコストも抑えられる社内研修やOJT。


学ぶ内容と目的によっては、複数を組み合わせるハイブリッド型も効果的です。


・効果的にリスキリングを進めるステップその4

 「習慣化とフィードバックの仕組みづくり」

継続こそが最強のリスキリング戦略です。

習慣化するには、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

さらに、定期的な振り返りを入れることで、モチベーションを維持しやすくなります。


モチベーションを維持するコツとして、

 手帳やスマホのアプリなどを活用して学習記録をつける。

 週に1回、今週の学びを振り返る時間を設ける。

 仲間と学習進捗を共有し、お互いに刺激を与える。


などがあります。

リスキリングは、思いつきで始めても続きません。

「何のために学ぶのか」を明確にし、「どうやって続けるか」を仕組みにすることが、成功の秘訣です。

そして、完璧でなくても、まず始めることが、最初の一歩なのです。


今回のまとめ

今回のまとめ

「戦略的リスキリングが未来の成長をつくる」


リスキリングは、企業にとって、人材不足解消と競争力強化の両輪の戦略として捉えることができ、個人にとっては、選べる人生のための最強の自己投資となります。

リスキリングの成功の鍵は、目的設定・ギャップ分析・学習の習慣化です。


リスキリングは、思いつきで行うものではなく、戦略として設計・実行することで真の効果を発揮します。

働く環境や価値観が多様化する今、自分の成長を他人任せにせず、学びを自ら設計する力が求められています。


最後にご案内です。

次回、「職種別リスキリング事例と未来予測:AI時代を生き抜くためのスキルとは」


最終回となる次回は、職業別にリスキリングの実例を紹介しながら、現場でどのように活用されているかをリアルに掘り下げていきます。

さらに、今後社会がどう変わり、それに対して私たちはどう備えるべきか、未来への予測も交えてお届けします。


「他の人はどうリスキリングしているの?」「これからの社会で何を学べばいい?」

そんな方は、ぜひ最終回までご覧ください!


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